1の戸籍の収集と並行して、被相続人(お亡くなりになった方)に遺言書があるのかどうか調べていきます。
遺言書はいくつか種類がありますが、ここでは一般的な『公正証書遺言』と『自筆証書遺言』の二つの探し方に絞って解説してきます。
公正証書遺言は、遺言者(遺言を書く方)が公証役場で作成するもので、公証役場が原本を保管してくれます。
一方で自筆証書遺言はいわゆる手書きの遺言書で、自宅や貸金庫などに保管されるケースが多いです。しかし自筆証書遺言のデメリットとして、遺言書の保管場所を伝えない場合には本人しか保管場所がわからないという点があります。自筆証書遺言は、作成したにも関わらず保管場所を伝えなかったため発見されないで遺産分割協議が終わってしまった、という事も少なくありません。
結論として被相続人が遺言書を書いていたかどうかは、以下のフローで確認していくのが良いと思われます。
まず、自宅の最寄りの公証役場に行き、遺言検索システムを利用して公正証書遺言が存在するかどうかを確認します。
公正証書遺言は、平成元年(東京都内は昭和56年、大阪府内は昭和55年)以降に作成されたものがある場合に、遺言検索システムというものを利用する事でその存在の有無を確認することができます。
遺言検索システムとは、公証役場が公正証書遺言をデータで管理しているシステムで、日本全国の公証役場で利用する事ができます。
ただし、遺言検索システムで判明するのはあくまで
●公正証書遺言が存在するかどうか
●存在する場合の保管されている公証役場
の二つの事項だけであるため、その公正証書遺言の内容までは確認をする事ができません。
遺言書の内容を確認するためには、公正証書遺言を作成した公証役場に対して交付請求を行う必要があります。交付請求はその公証役場へ直接訪問するか郵送でも行う事ができます。
公証役場はこちらで検索ください。
よって、自宅の最寄りの公証役場で遺言検索システムを利用して公正証書遺言の有無を確認し、存在すると判明した場合にはその作成した公証役場へ交付請求をするのが効率的に公正証書遺言の有無を確認できると思われます。
交付請求をした場合には、公正証書遺言がある場合でもない場合でも遺言検索システム照会結果通知書という書面を発行してもらえます。遺言検索システム照会結果通知書は、遺産分割協議の際に公正証書遺言がなかったと証明するために必要となる可能性もあるので、公正証書遺言が存在しなかったとしても大切に保管しておきましょう。
なお、遺言検索システムを利用する場合には、以下の注意点があります。
■ 存命の方の遺言は検索できない
死亡した方の公正証書遺言のみを検索する事ができ、存命の方の遺言書については検索をする事ができません。
■ 自筆証書遺言の有無については検索できない
自筆証書遺言の有無については公証役場では確認できません。
法的に自筆証書遺言を確認する方法は、後述する フロー②遺言証書保管制度(法務局)をご確認ください。
■ 必要資料を揃える必要がある
遺言者の死亡の事実が確認できる戸籍謄本や、請求者の運転免許証などの本人確認書類が必要となります。何が必要になるかは事前に公証役場へ問い合わせをして必要資料を確認をするのが良いでしょう。
■ 誰でも利用できるものではない
遺言検索システムは、相続人や受遺者(遺言で財産をもらえる人)などの利害関係者が利用できます。多くの場合は相続人が手続きをする事が多いため、ここが問題になることは少ないと想定されます。
■ 検索自体は無料だが、交付請求は費用が発生する
遺言検索システムは無料で利用できますが、遺言謄本の交付については250円×遺言書のページ数分の料金が発生します。
自筆証書遺言保管制度とは、遺言者が自筆証書遺言を法務局に預けて、法務局が遺言書を保管してくれる制度です。
この制度を利用した場合、相続人等が請求をすれば必ず自筆証書遺言が見つかるため、自筆証書遺言が見つからなかったという事態は起こり得ません。
また、法務局が遺言者の死亡を確認した場合に、遺言者が事前に希望していたときは指定した相続人等に遺言書があることを法務局が通知をしてくれます。
また、この制度を利用した自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認が不要となります。
具体的な手続きは、遺言書保管事実証明書の交付請求を行う事で確認します。この請求は全国どこの遺言保管所でも手続きが可能で、郵送でも行う事ができます。
最寄りの遺言保管所はこちらから確認できます。
なお、遺言を何回も書き換えている可能性がある方は、フロー①で公正証書遺言が見つかった場合でもこのフロー②で自筆証書遺言がないか確認する事をお勧めします。確認をする理由としては、『遺言書が一つしか存在しない』とは限らないからです。
遺言書が複数発見存在しその内容が抵触する場合には遺言書の種類に関わらず、その抵触する部分については後日付の遺言が優先して効力を有します。
例えば、A遺言で「自宅は長男に相続させる」と記載されていたとしても、A遺言より後に作成されたB遺言で「自宅は次男に相続させる」と記載されていた場合には、B遺言が優先されるため自宅は次男が相続する事になります。
公正証書遺言を作成している場合には自筆証書遺言を別途作成している可能性は低いですが、念のため確認する事をお勧めしております。
フロー①とフロー②は法的に遺言書が存在するかどうかを調べる方法でしたが、被相続人が遺言書を自筆で書いていてどこかに保管していた場合には、残された相続人が自宅や貸金庫などを探して遺言書がないかどうか探し出す事となります。
フロー③では被相続人の自宅や貸金庫などを探して、遺言書がないかどうか探してみましょう。
また、貸金庫を利用している場合には被相続人の通帳から貸金庫利用料が引き落としされているため、通帳に貸金庫と記載されて引き落としがある場合には貸金庫がある前提で対応頂くのがよろしいかと思います。
仮に自宅などを探して自筆証書遺言が見つかった場合には、以下の注意点があります。
■ 家庭裁判所の検認手続
自筆証書遺言を発見した相続人は、家庭裁判所で検認手続きをする必要があります。
検認とは、相続人に対して遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造等を防止する手続きを言います。
■ 遺言書を開封
封筒に入っている遺言書の場合、絶対に家庭裁判所以外の場所で遺言書を開けてはいけません。もし勝手に開けてしまった場合は、5万円以下の過料が課せられる可能性があります。
■ 相続人になれない場合がある
もし、遺言書の内容が自分に都合の悪い内容で遺言書の内容を変えてしまったり隠蔽などをしてしまった場合には、欠格者として相続人になれず財産を受け取る事ができなくなってしまう可能性があります。
また、貸金庫については以下の注意点があります。
■見つからない可能性
貸金庫に遺言書を保管している場合で、相続人が貸金庫の存在を知らなかったときはその遺言書の発見が遅れてしまいます。
相続は原則として遺言書が優先しますので、後から遺言書が見つかって遺産分割協議のやり直しという事態も起こりえます。
■立ち合い
銀行などに貸金庫がある場合には、金融機関にもよりますが貸金庫の開閉には相続人全員の立会を求められる場合があります。相続人一人がいれば貸金庫の開閉を行う事ができる金融機関もありますが、開閉するにはどうすればいいのか事前にその金融機関に確認をしましょう。
■訪問
貸金庫の中身は貸金庫が存在する店舗で確認する必要があるため、相続人が店舗に赴く必要があります。戸籍の収集などとは違い郵送では対応してくれません。
■事実実験公正証書
貸金庫には現金や金地金が入っているケースがありますが、貸金庫の開閉に立ち合いをしていない相続人から「本当はもっとあったんじゃないか」と言われてしまう可能性があります。
遺産分割が揉めそうで被相続人が貸金庫を利用していた場合、その中身の証拠保全をするために事実実験公正証書を作成する事をお勧めします。
事実実験公正証書とは、公証人が貸金庫の中身を実際に確認して、その内容を公正証書で作成してくれるものになります。
遺言書がある場合には、原則としてその遺言書の内容に従って財産を取得する事となり、遺言書の内容にすべて従う場合には相続人間で遺産分割協議は不要となります。
よって、遺言書の存在については早めに把握する事が必要となるため、戸籍の収集と並行して手続きをしていきましょう。
藤野税理士事務所では遺言書の作成支援も行っております。
これまで様々な遺言書を拝見してきましたが、相続税のシミュレーションをしないで作成されてきた遺言を数多く見てきました。
相続は、だれがどの財産をどのくらい取得するかで相続税額が大きく変わってきてしまします。
相続税のシミュレーションをしないで遺言書を作成した場合には、税法上認められている様々な有利な規定を適用できずに、過大な相続税を支払う事になってしまう可能性があります。
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