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役員借入金を代物弁済により解消し、受け取る年金も減らないようにした事例

  • 執筆者の写真: 藤野翔一
    藤野翔一
  • 2022年10月31日
  • 読了時間: 4分

更新日:2023年1月28日



● 社長はもうすぐ65歳を迎えるが、まだまだ現役で引退は考えていない。

● 相続と事業承継でのご相談で、もともとの依頼事項は役員借入金の解消。

● 会社には社長個人へ返済しなければならない役員借入金がある。

● 会社は現金預金が少なく、役員借入金を社長個人へ現金で返済する事は不可能。

● 今貰っている役員報酬では、65歳になったときに年金がもらえなくなることが判明。


役員借入金:藤野税理士事務所




① 役員借入金


昔、会社の業績が良くなかったときに社長個人が会社へ資金を投入し、そのまま手つかずの状態で何年も経過して貸借対照表に役員借入金が残っている会社の案件で、役員借入金の解消のサポートをしてほしいというご要望でした。


役員借入金とは会社が社長個人から借りているお金をいい、わかりやすくいうと会社は通常銀行からお金を借りますが、銀行ではなく社長個人からお金を借りてできた借入金というイメージになります。


会社と社長個人は別人格なので、会社は社長にお金を返す義務があり、役員借入金は個人から見た場合には会社への貸付金という債権になり、何もしないと相続税の課税対象になってきてしまいます。


役員借入金は大きく分けると5つほど解消方法がありますが、一番多いのは社長個人が会社への貸付金を放棄する債務免除という方法になります。


債務免除も場合によっては贈与税が発生するため(相続税法第9条)、最適な方法を提案してほしいというご要望でした。



② 年金支給停止


社長が会社から受け取っている役員報酬を確認すると、このままの金額を受け取り続けた場合には社長が受給できる年金(老齢厚生年金部分、以下同じ)に制限がかかることが確認できました。


ある程度の給料(役員報酬)のある方が働きながら年金を受け取った場合には、受け取る年金が一部減額または全額支給停止になります。


つまり、これまでまじめに社会保険料を納めてきたのに、いざもらえる年齢になると収入があるという理由で年金をもらえない、という事態が起こってしまいます。


こちらについても、将来受け取る年金について何か方法があれば教えてほしいというご要望でした。





この案件では、3つの大きな目線がありました。


1点目は役員借入金を解消すること。


2点目は社長が65歳から受け取る年金に制限をかけずに、満額もらえるようにすること。


3点目は相続対策を実行すること。



1点目の役員借入金の解消については、現金でなく物で返済する「代物弁済」をご提案いたしました。


2点目の年金については、会社から役員報酬でなく不動産収入を得ることで、年金の制限を受けないようにしました。


3点目は通称、逆法個売買と言われる手法を実行しましたが、複雑で長文になるため割愛いたします。





① 代物弁済


会社は自社の事務所として使用している不動産を所有していましたが、代物弁済により社長への役員借入金を現金でなく、自社の事務所という不動産の現物で弁済しました。


会社は不動産で代物弁済することで貸借対照表から不動産50がなくなり、役員借入金50を返済したこととなります。

代物弁済後は不動産という資産と役員借入金という負債の両方がなくなり、結果として役員借入金を解消する事が出来ました。

(説明簡略化のため、不動産の時価50=役員借入金の時価50の前提で記載しております。)





② 年金支給制限


一方で社長個人から見た場合には代物弁済を行ったことにより、貸付金という資産が不動産という資産に変わったことになります。


つまり、通常は貸付金が現金で返済されますが、代物弁済の場合は貸付金が不動産という現物で返済された事になります。


社長個人はこの不動産を会社に貸し付けることにより毎月家賃収入が入る事になり、役員報酬と家賃収入の両方が社長個人の収入になります。


不動産の収入は、受取年金支給停止額の収入の判定に影響しないため、満額受け取ることができるようになりました。


つまり今回の事例の場合には、役員報酬で給料を受け取り続けた場合には年金の支給制限に抵触しますが、不動産収入へ転換することで年金の支給制限を回避できた形になります。





メリットもありますが、もちろんデメリットもあり一部を記載すると以下のようなものになります。


【注意点】

● 代物弁済を実行した場合には、時価と帳簿価額の差額について損益が発生する。

● 代物弁済は消費税の課税の対象となる。

● 不動産の移転には登録免許税等の移転コストが発生する。

● 代物弁済の時価と、代物弁済後に社長個人へ支払う家賃は適正額である必要がある。


メリット・デメリットをご説明し、ご納得の上で代物弁済を実行しました。




ポイント① 役員借入金は早めに解消すること


ポイント② メリット・デメリットを理解した上で、最適なスキームを実行する事



事業承継なら藤野税理士事務所へお任せ下さい!




※実行当時の法律に基づき記載しており、法改正により取り扱いが変更される場合があります。


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