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個人の開業医が 医療法人成りした事例①



● 個人事業主としてAクリニックを運営してきた歯科医が、医療法人成りした事例

● 院長先生は現在60歳で、長男が後継者候補

● 長男は大学卒業後に他の歯科医で勤務しており、将来はAクリニックを引き継ぐ予定

● Aクリニックは地域でも評判の歯科医で、売上が好調に推移

● 院長先生は前から法人成を検討していたが、顧問税理士に反対されて現在に至る

● 個人のままが良いのか法人成りをした方が良いのか、総合的に判断してほしいという事で藤野税理士事務所へご依頼ただいた事例





個人で開業しているお医者様について、個人事業主のままがいいのか、法人成りをした方がいいのか、税金だけの枠でなく家庭環境や今後の事も勘案して総合的に判断してほしい、というご依頼でした。


初回面談をした結果、院長先生のご要望は大きく分けると次の事項になりました。


■ご要望①

税金的に、個人事業主のままがいいのか、法人成りをした方がいいのか、所得税や相続税を総合的に見て検討してほしい。


■ご要望②

長男が将来クリニックを引き継ぐことが予定されているが、個人事業主の場合と法人成りをした場合ではどちらが良いのか教えてほしい。


■ご要望③

医療法人成りする事について顧問税理士に反対されているが、顧問税理士とは地域の行事などで今後も接点があるため、顧問税理士との関係性を壊したくない。






ご要望について藤野税理士事務所として以下のようなご回答をし、結果として院長先生が医療法人成りをするという意思決定をされたため、法人成りをサポートしました。


■ご要望①

税金的に、個人事業主のままがいいのか、法人成りをした方がいいのか、所得税や相続税を総合的に見て検討してほしい。


【 所得税の観点 】

医療法人成りを検討する場合に、まず見るのは売上と所得(売上−経費)になります。


所得税は所得が高ければ高いほど納税額が多くなり(超過累進税率)、一番高い税率で所得税と住民税合算で約55%の税率が課されます。(その他にも所得や業種により事業税が発生します)


一方で法人成りをした場合には売上が法人に帰属するため、所得税ではなく医療法人が法人税を支払うことになります。法人税は所得に対して税率が約30%前後で課されます。


一般的に個人は利益が出てきたら法人成りをした方がいい、といわれるのはこの個人と法人の税率差によるものになります。



【 相続税の観点 】

医師は高収入の方が多い業種になるため、医療法人成りする場合は所得税だけでなく将来の相続税も検討しなければなりません。


個人事業主の場合には、事業に使用する現金預金や医療機器などの資産が個人に帰属するため、事業用資産のすべてが相続税の課税対象になります。


これに対し医療法人成りをした場合には、事業用資産が医療法人に帰属するため、資産の所有者は個人でなく医療法人となり、個人事業主と違い医療関係の事業用資産は相続税の課税対象となりません。

(※現在は持分なしの医療法人しか設立できないため、持分なし医療法人の前提)


藤野税理士事務所で医療法人成りを検討する場合には、所得税と相続税の2面から検討し、法人成りをした方が良いのかどうかのシミュレーションを行います。


ご面談をして確定申告書を拝見した結果、医療法人成りは十分メリットがあると判断したためその旨をお伝えしました。



■ご要望②

長男が将来クリニックを引き継ぐことが予定されているが、個人事業主の場合と法人成りした場合ではどちらが良いのか教えてほしい。


医療法人成りを検討する場合に、税金と同じくらい重要になるのが承継関係になります。

確定申告書を拝見した後にまず、後継者候補がいるかどうかをお伺いします。子供がいて継ぐ予定がある、子供はいるが継ぐ予定はない、という場合では今後の対応が全く変わってきます。


今回のAクリニックでは後継者候補がいたため、後継者候補がいる場合に医療法人成りしたケースのメリット・デメリット、個人と法人の違いをご説明し、ご納得頂きました。


法人成りした場合のメリットは、分院開設が可能(個人では不可)になる点等、デメリットは解散する場合の残余財産が国庫に帰属する等 メリットデメリット様々ありますので、医療法人成りを検討されている方は是非お問合せ下さい。



■ご要望③

医療法人成りする事について顧問税理士に反対されているが、顧問税理士とは地域の行事などで今後も接点があるため、顧問税理士との関係性を壊したくない。


事業承継やスポット業務を行う場合によくあるのが、お客様と顧問税理士の先生との関係性で、顧問税理士は変えられないというご相談です。


こちらについては院長先生と顧問税理士の先生と藤野税理士事務所とで面談をし、顧問税理士の先生が医療法人成りに反対する理由をお伺いし、じっくりとご説明差し上げ最終的には顧問税理士の先生にもご納得頂いて法人成りするという結論で一致しました。

何よりも院長先生が法人成りをしたいというお気持ちが強いことが一番大きな決め手となりました。


この結果、医療法人成りのサポートは藤野税理士事務所が対応し、医療法人成りした後の毎月の記帳や申告書の作成はこれまで通り顧問税理士の先生にご対応頂く事で、院長先生のご要望にお応えする事ができました。





院長先生によって医療法人化するという意思決定がされ、顧問税理士の先生のご協力も仰ぎながら医療法化の手続きを行いました。


医療法人化のサポートは税理士でなくても可能ですが、次の論点は税理士でなければできない論点(※社会保険についての専門家は税理士ではなく社労士)で、税理士以外の者が税金のシミュレーションをした場合には税理士法違反となります。

医療法人成りの入口は今後一生後戻りができないため、医療法人成りは事業承継に強い税理士にご依頼いただくことをお勧めいたします。



【 収入 】

個人事業主のときは事業所得という形で、売上から経費を引いて残ったものが自分の手取りでしたが、医療法人成りした場合、院長先生は医療法人から役員報酬という給料で収入を得ることになります。


院長先生個人の役員報酬を増やした場合には、医療法人では役員報酬という経費になり医療法人目線では経費が増えるため法人税は減少します。

しかし、役員報酬を受け取る院長先生個人では給与の収入となり、高い役員報酬を受け取るほど所得税や社会保険料がかかってきます。


役員報酬を決定する場合には各種のシミュレーションをし、最適解のところで役員報酬の金額を決定していきます。



【 税金シミュレーション 】

法人成りする場合には個人と法人の税金シミュレーションを行い、メリットがどのくらいあるのかを把握します。


また、医療法人特有の論点としては社会保険があります。

一般的に法人成りした場合には従業員は社会保険に強制加入となります。社会保険強制加入は大きな出費となり経営者目線で見た場合には法人成りのデメリットとして挙げられる反面、従業員から見た場合には大きなメリットとなります。


法人成りをする前にこの論点についてはしっかりとお話をしますが、Aクリニックでは医師国保を継続することができたため、社会保険の影響を少なくすることができました。


医療法人成りに限らず、株式会社でも法人成する場合には税金だけでなく社会保険の影響も考慮してシミュレーションをする必要があります。



【 個人から法人への資産の移転 】

医療法人設立時に、個人で所有している医療機器などの資産を医療法人に移転する必要があります。

その場合の移転方法については売買や拠出などの方法があり、ここで失敗すると今後の税金が大きく変わってきます。


一番大きな検討事項は、『クリニックの土地や建物を個人で所有するか、法人へ移転するか』の論点です。

自宅兼診療所として診療所を開設している場合もあれば、自宅とは別の場所に診療所を個人で開設している場合もあるかと思います。


院長先生の状況に応じて、診療所の不動産をどうするかアドバイスさせて頂きました。






医療法人は通常の株式会社と比較して特殊論点が多く、医療法の知識も必要になります。

法人の確定申告書も税務署に提出する申告書とは別に都道府県に申告書を提出したり、配当類似行為の抵触など、期中においても注意しなければならない点が数多くあります。


Aクリニックの場合は医療法人成りした後も色々相談したいという事で、通常の顧問業務は顧問税理士の先生にこれまで通りお願いし、藤野税理士事務所はコンサルティング顧問という形で関与させて頂くことになりました。



事業承継は法人税や相続税などの税金だけでなく、医療法や社会保険など様々な周辺知識が求められるという事例でした。



ポイント① 

医療法人成りは事業承継に強い税理士に依頼する事


ポイント②

何事も実行前にシミュレーションを行い、根拠に基づき意思決定をする事


ポイント③

顧問税理士以外にも、コンサルティング顧問という選択肢を持つ事




事業承継なら藤野税理士事務所へお任せください!




※実行当時の法律に基づき記載しており、法改正により取り扱いが変更される場合があります。

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