あえて相続放棄をして トータルでの相続税を減額した事例
- 藤野翔一
- 2022年10月8日
- 読了時間: 5分
更新日:2023年1月28日

【 親族関係図 】

● 藤野税理士事務所で相続税申告を対応した事例。
● お亡くなりになった方(被相続人)は長男で、死亡時の年齢は62歳。
● 不幸にも親より先に子供(長男)が亡くなってしまい、相続発生から2ヶ月後に面談。
● 長男には貯金がある様子で、相続税が発生する可能性が高い見込みであった。
● 長男は生涯独身で、子供もいない。
● 父と母のそれぞれの両親はすでに死亡している。
● 親族関係図は上記の通り。
● 窓口対応して頂いたのは長女。
● 長男には配偶者も子供もいないため、相続人は父と母の2名になる見込み。

相続税申告の相談でお問い合わせ頂き、藤野税理士事務所で相続税申告を対応した案件でした。
窓口の対応をして頂いたのは長女で、知り合いに税理士はいたものの相続税には明るくない様子とのことで相続税申告に強い税理士を探しており、ホームページから藤野税理士事務所へお問い合わせを頂きました。
藤野税理士事務所へお問い合わせを頂く前に 既に他の税理士事務所2社と面談しており、相見積もりの中でのお問い合わせとなりました。
3社目で藤野税理士事務所にお問い合わせ頂き、この3社の中から相続税申告を依頼する税理士を決めるとの事でした。

相続税申告業務において、どの税理士事務所でもまず最初にヒアリングする事は以下の2点になります。
① おおよその財産内容(不動産の有無や預金などの金額)
② 亡くなった方の親族関係図(相続人の把握のため)
前の2つの税理士事務所でも同じことを聞かれており、今回のケースでは相続人は父と母になると既にご理解されていました。
① おおよその財産内容について
長男は会社を60歳で定年退職しておりまとまった退職金を受け取ったのですが、退職金を銀行に預けたまま使うことなく62歳でお亡くなりになりました。
また、生前に無駄使いをすることがなく、堅実な生活をされていたとの事でした。
長女が長男の部屋を整理しているときに通帳を発見し、そこで初めて残高を見て相続税申告が必要とわかり、結果的に財産の大部分は預金で占められていました。
② 親族関係図について
次に親族関係図をお伺いしました。
そして親族関係図を見た瞬間に、
父と母があえて相続放棄をする事
をご提案しました。

父と母が、①相続放棄をしない場合と、②相続放棄をした場合では、相続人は以下のように変わります。
①相続放棄をしない場合(現状)
父と母が相続放棄をしない場合には、長男に配偶者と子供がいないため、相続人は父と母の2名になります。
②相続放棄をした場合
父と母が相続放棄をした場合には、父と母は最初から相続人でないと考えるため相続人とならず、第3順位である長女(長男の兄弟姉妹)が相続人となります。
①と②の一番の違いがお分かりになりますでしょうか。
それは、①は相続人が父と母であるため長男の財産が親に相続され、②は相続人が長女であるため長男の財産が長女に相続されるという点です。
これが意味する事は ①の相続放棄をしない場合、将来親が亡くなった際 長男の財産について長女が相続税をもう一度支払わないといけない、という事です。
【 ① 相続放棄をしない場合 】
相続放棄をせずに長男の財産が親に相続された場合には、まず親が長男の財産について一回目の相続税を支払います。
親は既に高齢で年齢的に長男からの財産を使い切らないと考えられるため、将来親がお亡くなりになった場合には、親の相続財産の中には長男から相続した退職金などの財産が含まれることになり、長女は長男の財産について改めて二回目の相続税を支払うことになります。
つまり、長男の相続で親が相続放棄をしない場合、長女が長男の財産を相続するには相続税を2回も支払わないといけないという事になります。

【 ② 相続放棄をした場合 】
相続放棄をした場合は相続人が長女一人になるため、長男の財産がダイレクトで長女に相続されます。
相続放棄をした場合には、長男の財産は親の手許にないため親の相続の際、長男の財産について改めて2回目の相続税が長女に課されることはありません。

ただし、注意点として②の場合には相続人が兄弟姉妹となるため、長男の相続税申告において長女の相続税が2割増し(相続税の2割加算)になります。
しかし、親の相続をシミュレーションした結果、2割加算を受けたとしても相続税が2回かされる事に比べたら圧倒的に税額が少なくなったため、結果として父と母が相続の放棄をし、相続税の申告書を提出するに至りました。
長女の方が前に問い合わせをした2つの税理士事務所からは相続放棄の情報提供がなく、面談して見積書を受け取っただけで、どうしても内容が同じように感じて依頼する決め手がなかったとの事でした。
私どもが相続放棄のご提案することが相続税申告を依頼する税理士決定の決め手になり、結果としてご面談したその場で藤野税理士事務所へ相続税申告をご依頼いただきました。

相続放棄をする場合には、必ず亡くなった方の生まれてからお亡くなりになるまでのすべての戸籍を集め、本当に子供がいないかなどを確認し、全体の相続人を確定してから相続の放棄を家庭裁判所へ申請します。
一般的に兄弟姉妹が相続人になる場合に、必要となる戸籍を集めることは手間がかかるのですが、この案件の場合には長女の方が既に戸籍を集めてくださっており、スムーズに相続放棄の手続きに入ることができました。
将来の親の相続まで見越してトータルで相続税額を見た時に、相続税を減額することができた最大の理由は、お問い合わせ頂いたのがお亡くなりになってからすぐの2ヶ月後であったため、相続放棄を検討できる段階でお客様とお会いできたという点です。
相続放棄の期限が過ぎた段階でなく、早めにご相談頂いたからこそ対応できた事例でした。
ポイント①
相続税申告は、何社か面談して信頼できると感じた税理士へ依頼する事
ポイント②
期限を過ぎると対応できない事が増えるため、早めに税理士へ依頼する事
ポイント③
相続税は将来を考慮してトータルで考える事
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