【不動産権利関係】
● お亡くなりなった方(被相続人A)は生前、所有する土地を第三者である借地人Bに貸し付けて地代収入を得ていた。(⇒底地をA、借地権をBが所有)
● 借地人Bは借りた土地の上に居住用の建物を建築し、約30年生活してきた。
● 被相続人Aはその土地を借地人Bに約30年間貸し付けており、地代は30年前から一度も改定がされなかった。
● 地代は昔から据え置きであるため、固定資産税を控除したらほとんど手残りがなく、Aからしたら収益性が悪い土地であった。
● 被相続人Aが地代の改定をBに求めたことはなかった。
● 借地権者Bは高齢で、相続時点で老人ホームに入居することが決まっていた。
● Bは一人暮らしで、老人ホームに入居した後は空き家になってしまう。
● 当該土地は、遺産分割によりAの相続人であるCが相続により取得する事が確定。
● 相続人Cが相続後に借地権者Bと共に、第三者に対して共同売却した事例。
土地を貸し付けてそのままの地代で契約を継続し、収入は変わらないのに固定資産税は上昇して結果として収益性が悪くなっているというのはよく見受けられます。
Aから相続で土地を取得したCが、このままBへ土地の貸付を継続しても収益性が悪く管理の手間もかかるため、底地を売却したいというご要望でした。
土地というのは、所有権(自分で土地を所有して自分で使用収益ができる土地)でない底地や借地権の場合には土地の利用に制限がかかるため、市場で売却する場合には底地や借地権は所有権に比較して売却金額が低くなり、全国的にも一般借地権自体は減少傾向にあります。
しかし一方で、相続税評価においては底地は収益性が低いにも関わらず、ある程度都会に土地が所在する場合には高額な相続税評価額が算定されてしまい、相続税の負担が大きくなるという現実があります。
収益性の低い底地は、相続が発生する前に対策を講じられる事をお勧め致します。
借地の整理方法は大きく分けると、「地主が底地の売却」、「地主が借地権の買取」、「等価交換」の3択になります。(その他、相続税を現金でなく土地で納める物納の方法もありますが非常に難易度が高いです)
また、地主が底地の売却の場合、
①借地権者への売却
②底地買取業者への売却
③その他の者への売却
という選択肢があり、底地を誰に売るのかによって売却金額が大きく変わってきます。
不動産会社が仲介に入っており、話を伺うと借地権者Bも老人ホームに入居するための費用が欲しいため、Cに借地権を売却して借地権を現金化したいとのことでした。
借地権者も地主も土地を売りたい、という状態になり、結果として借地権者Bと地主Cの両名にとってその土地は「負動産」となってしまいました。
当該土地は住宅地にあり、相続税の評価をしている段階から買い手がつかずに売れない土地ではないと判断していたため、不動産会社の方に対して、「この土地が所在する隣の家の方に、この土地を買ってもらえないか聞いて頂けないでしょうか」という提案をしました。
「隣の土地は借金してでも買え」
という言葉がありますが、土地は一般的には細切れの土地よりもまとまった大きな土地の方が利用価値が高いため、土地を売却したい場合はまず隣の家の方にお聞きするのが効果的です。
不動産会社の方のお力添えもあり、結果として隣の家の方に該当の土地を購入して頂けることとなり借地権者Bと地主Cの共同で売却することで市場よりも高い金額で土地を売却できました。(底地買取業者に底地を売却した場合は非常に低い金額で取引されることが一般的です。)
また、地主Cについては相続で取得した不動産の売却であったため、取得費加算の特例も適用できました。
今回の事例ではたまたま不動産を売却できましたが、所在する場所や環境などで必ず売却できるとは限りません。地方にある土地は特に、
「売却できるであろう」
ではなく
「売却できないかもしれない」
という前提でご検討頂くのがよろしいかと思います。
ポイント①
収益性が良くない土地は、生前に対策をする事
ポイント②
~であろう、ではなく、~かもしれない、で検討する
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