【 株主構成 】
● 社長は非上場の会社を直接個人で8社(A社からH社)所有している。
● 社長には離婚歴が数回あり、それぞれの配偶者との間に子供がいる。
● その子供同士はお互いにほとんど会ったことがない。
● 社長には最初の配偶者との間に子供の「甲」がいて、甲はA社で社長の右腕として働いており、将来は甲に会社を継いでほしいと考えている。
社長との初回面談で、下記3点のご要望をお伺いしました。
(1)自分(社長)が亡くなったときに、子供同士で揉めないようにしたい
(2)将来は甲に会社を任せたいが、まだ株式は渡したくない
(3)社長はまだまだ現役で仕事がしたく、ホールディングス体制に興味がある
社長には配偶者の違う子供が数人おり、子供同士お互いにほとんど面識がないとのことで、将来自分に相続が起こった際に相続人間で揉めないようにするために遺言書の作成を検討されていました。
会社の後継者は、最初の配偶者との間の子供「甲」にしたいとのことで、会社の株式は甲以外には渡したくないが、他の子どもたちにも財産は均等に残してあげたい、とのご希望でした。
【 提案① 】
株式交換により、A社を親会社とするホールディングス体制の構築
A社からH社までグループとして一体運営をしており、今後も事業を拡大していきたいとの ご意向でした。
また、B社からH社までの各社は、生え抜きの従業員が会社の代表を務めており、この各社が純粋に業務に集中できる環境を構築したい、とのご希望がありました。
そのうえで社長は前々からホールディングス体制にした方がいいのか検討されており、ホールディングス体制のメリット・デメリットをご説明した上で株式交換という組織再編をご提案しました。
【 提案② 】
税金の試算をした上で、遺留分を侵害しない遺言書の作成
社長はまだお若く、後継者と考えている甲に現時点で株式を渡すつもりはないとのことで、社長に万が一があった場合に株式が甲に相続されるよう、遺言書の作成により株式の行先をフォローしました。
相続が発生した場合において 遺言書がないときは、相続人間での話し合い(遺産分割協議)により、財産をどう分けるか決めることになります。
この遺産分割協議は原則として、相続発生してから10ヶ月以内にまとめる必要があり、相続人の全員が揃っていない状態で進めた遺産分割協議は無効となります。
自分がいなくなった死後に、ほとんど面識のない人間同士が財産の取得について合意することは非常に困難を極めます。
社長もその点は理解されていたため 相続税の試算をした上で、遺言書の作成をサポートしました。
● ホールディングス体制 【ご要望(3)】
株式交換によりA社を親会社とし、その下にB社からH社までぶら下げて子会社としました。
いくつか提案した内容の中には、株式移転という組織再編行為で新たに親会社を作ることも可能でしたが、社長のご希望をお伺いし今回は株式交換の手法を採用しました。
親会社であるA社に経理や総務などの管理部門を移転し、A社がB社からH社までのバックオフィス業務を一元管理し、B社からH社までの子会社各社が事業に集中できる環境を整備することが可能となりました。
● 遺言書の作成 【ご要望(1)(2)】
社長が直接、各社の株式を保有していた場合(株式交換前)に遺言書を作成する場合には、
・A社株式を甲に相続させる
・B社株式を甲に相続させる
・C社株式を甲に相続させる
・D社株式を甲に相続させる
・E社株式を甲に相続させる
・F社株式を甲に相続させる
・G社株式を甲に相続させる
・H社株式を甲に相続させる
という遺言の書き方にならざるを得ません。
この場合、いかに他の相続人にも財産を均等に与える旨の遺言書の作成をしても、どうしても甲が多くの財産を取得する印象が出てしまいます。
しかし株式交換を実行した後は
・A社株式を甲に相続させる
と書くだけで、B社からH社までの子会社も紐づきで甲が取得することができます。
遺言書があっても遺留分(兄弟姉妹以外の相続人が一定程度財産を相続する権利)を侵害していた場合には、せっかく作成した遺言書が機能せず、相続人間で揉める火種となってしまいます。
遺言書があるから相続の時は何が起こっても安心、ということはありません。
また、これまで何百という遺言書を拝見してきましたが、相続税を検討した上で作成された遺言書は非常に少ないのが現状です。
相続税は財産の取得者や取得割合に応じて、税額が大きく変わってきます。
遺留分のみならず、財産の取得割合や税金の特例の有無まで考慮した上で、遺言書を作成されることをお勧めいたします。
最後に、「付言事項」というものをご存じでしょうか。
付言事項とは、簡単にいうと自分の想いを遺言書に書くことです。
通常、不動産は長男Aに相続させる、というような書き方で財産の行先を指定し
ます。付言事項はこれに付け加える形で、遺言者自身の想いを遺言書に記載します。
例えば、
「俺は平日は仕事、土日はゴルフと、家族の事は母さんに任せてばっかりで本当に申し訳ないと思っている。でも母さんは何一つ文句を言わず、朝早く起きて毎日弁当を作ってくれた。子供たちも素直に育ってくれて、素敵な家族に恵まれて本当に幸せだった。子供たちにはこれからも母さんを助けて、家族仲良くやっていってほしい。今まで本当にありがとう」
というようなものです。
付言事項のある遺言書とない遺言書とでは、実際に遺言書を開いたときの重みが全く違ってきます。
「天国のお父さんがこう言ってるんだから・・・」
是非、遺言書を作成する際には付言事項も書かれることをお勧めします。
ポイント①
税金の影響を考慮した遺言書の作成すること
ポイント②
遺留分を考慮した遺言書を作成すること
ポイント③
付言事項は是非、記載すること
相続税申告なら藤野税理士事務所へお任せください!
Comments